ちいさなギャラリーの店番日記
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宮本
行商美術にて
「かさぶた I」

恐縮ながらこの世に「かさぶた芸術」などというものが存在しているとは思いもしなかったのだった。怪我をしたあとにできるかさぶたのようなものをミクロの視点レベルに拡大した大作があるというのだ。それだけでもものすごく変な人である。行商美術の際に送られてきた作品にも『かさぶた I』とタイトルがつけられていて、白い瘤のような石とそれを横切る帯状の蛍光色がなんとも妙な存在感を醸し出していた。
これまた不思議なチカラに取り憑かれたのか、宮本さんは二十代の頃「久が原遺跡」に興味を持ったのだという。「昔の人が歩いた形跡を見つけ、そこに当時のお金が落ちていたりすると、落とした人はどういう人なのだろうなどと、ついつい考えてしまうらしい」(秋山祐徳太子著『泡沫桀人列伝―知られざる超前衛』より)。実際に発掘にも参加して古道の行先を確認し、さらにその下に年代順に横たわる関東ローム層の「美」に触れたことが、宮本さんの原点なのだそうだ。

宮本

宮本さんもまた「藝術奉納隊」の一員として宇佐に見えたときにお目にかかった。見上げんばかりの細身の長身に明らかに寸詰まりの和服を着流し剥き出しの作品をランドセルのように背負って鮮やかなピンク色の幟を持った様は、一見して明らかに「変な人」だったのだが、奉納隊の一行のなかで唯一携帯電話を持っているのが宮本さんだと聞いて、これまた妙な気持ちになった。背負われた作品を見ようと後ろをついて歩くと右の手首になぜか輪ゴムが二、三本はめられていて、この輪ゴムを外したらバラバラになっちゃったりするのだろうか、などと訝しくも興味深く見守ってしまう。しかしそれがあまりにも自然だったので、奉納の翌々日にお会いした宮本さんがスーツを着ていたのを見てもう一度びっくりした。つねにあの寸詰まりの和服姿で暮らしている人だと勝手に思い込んでいたのである。

奉納された作品もやはりかさぶただった。「不要になった遺跡の土をもらい受けて油絵具に混ぜ、その他の素材も研究した末に、微妙な色彩を表現することに成功した」(同)といわれる作品の色は、何度も何度も薄く重ね塗りされた末の、奥深い緑をしていた。その繊細な色合いは宮本さんの物腰のやわらかさを裏付けるようだ。ところどころ剥がれそうになっている「かさぶた」の断片の端っこは無性に物悲しい笑いを誘い、宇佐神宮の境内をついて歩いたときの飄然とした長身の後ろ姿とダブって思い出される。

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